「これ以上責任を負いたくありません。」
管理職への昇進条件をクリアしている部下との面談で、そう言われた。昇進すれば、給料も上がる。それでも、その部下は昇進を断った。
正直、もったいないと思った。けれど同時に、その気持ちが分からないわけでもなかった。僕自身、管理職として15年以上を過ごしてきて、この立場が「割に合う」と胸を張って言えたことはないからだ。
実は、「管理職になりたくない」と感じているのは、その部下だけではありません。一般社員の77.3%が、同じように感じているという調査結果があります。
この記事では、なぜこれほど多くの人が管理職を避けたがるのか、そしてそれでも管理職を続けている50代のリアルな胸の内を、データと実体験の両方から掘り下げます。
読み終える頃には、「割に合わない」と感じながらも踏みとどまっている自分が、決して弱いわけではないと分かるはずです。
「管理職なんて割に合わない」と、僕自身も思っている

正直に言うと、僕は人付き合いが得意なほうではない。雑談より、ひとりで黙々と仕事を進めている時間のほうが落ち着く。
それでも、自分が管理職に向いていないと思ったことはないし、人から「向いていない」と言われたこともない。15年以上続けてこられたのは、「ありがとう」と言われた瞬間や、チームでゴールを達成して喜びを分かち合えた瞬間を知っているからだと思う。人と関わるのは煩わしい。でも、その先にある瞬間が、たしかに管理職を続ける理由になっている。
ただ、それと「割に合うか」は、まったく別の話だ。
業務は増える。責任は重くなる。ストレスも増える。給料は、それに見合っているとは言いがたい。部下に「これ以上責任を負いたくありません」と言われたとき、僕はその判断を否定できなかった。僕自身が15年以上、「罰ゲーム中」だと思っているのだから。
一般社員の77.3%が「管理職になりたくない」と答える理由

JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)が2023年4月に実施した調査(従業員300名以上の企業に勤める一般社員1,116名を対象)によると、**一般社員の77.3%が「管理職になりたくない」**と回答しています。
理由として挙げられるのは、次のようなものです。
- 管理職の業務量が増えている
- 責任が重くなる
- ストレスが増える
- 給料が業務量に見合っていない
- ハラスメントへの配慮など、気を遣う場面が多い
さらに、パーソル総合研究所が実施した「働く10,000人の就業・成長定点調査」(2026年調査)では、「管理職になりたい」と回答した人はわずか17%でした。これは、2018年の調査開始以来、最も低い水準です。
管理職という役割が、以前にも増して「割に合わないもの」と見なされるようになっている、ということでしょう。
それでも管理職を続けている50代たちの本音
業務は増える。責任は重くなる。給料は見合わない。それでも、管理職という椅子に座り続けている50代は少なくありません。僕自身もその一人です。
なぜ降りないのか、と聞かれたら、正直に答えるのは難しい。ただ、いくつか思い当たる理由はあります。
- ここまで積み上げてきたものを手放す怖さがある
- 今さら「一般社員に戻りたい」とは言い出しにくい空気がある
- 部下やチームへの責任感が、単純な損得勘定を上回ることがある
- 転職して年収が下がるリスクより、今の割の合わなさのほうがまだ「知っている痛み」である
「割に合わない」と思いながら続けているのは、諦めではなく、天秤にかけた結果、今はこちら側に留まっているだけなのかもしれません。
まとめ:罰ゲームでも、降りられない理由がある
一般社員の77.3%が「管理職になりたくない」と答え、実際に「なりたい」と答えた人はわずか17%。数字だけ見れば、管理職はもはや誰も望まない役割になりつつあります。
昇進を断った部下の選択は、そういう生き方もあると思う。ただ、10年後、20年後に振り返ったとき、「あのとき挑戦しておけばよかった」と後悔だけはしないでほしい。そう願うのも、また本音です。
それでも管理職を続けている人がいるのは、単に「言い出せないから」ではなく、それぞれに踏みとどまる理由があるからです。割に合わないと感じながらも、その場に留まっている自分を、責める必要はありません。
次の記事では、「辞める勇気が、まだない」というテーマで、転職という選択肢を前にしながら動けずにいる50代のリアルな葛藤を取り上げます。
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